彼のお子さんたちはみな社会人。

早くに結婚したせいか、お孫さんもいる。

かわいくてたまらないお孫さんのことや

逞しく成長していくお子さんの話。

あどけない少年だった息子さんが

すっかり大きくなって、今は

彼の支えになっていると聞くと

ナイショでエールをおくっちゃう。

ごくたまに、奥さまや嫁いだ娘さんのことを話すこともある。

良き夫の彼が

ご家族から深く愛されているなぁって

嬉しくなる。

仕事を懸命にしているときの彼や

父親らしい一面を想像するのは

なんと言うか………とても楽しい。

彼の人生のこれからが

穏やかで

豊かなものでありますように。

私と離れたあとも、ずっと。


私も、家庭はとてもたいせつ。

夫は両親を大事にしてくれるし

少々家事に手抜きをしても、食事のことも

何ひとつ文句は言わない。

姑も自立していて尊敬できるひと。

たぶん、夫を以外のひとと、

一緒に暮らすのはムリって思う。

未成熟婚。それは、一般的には

とても残念なことなのかもしれない。

子どもに会えなかったのは残念だけれど、

私にとって、夫との関係には

なんの支障もないことなのだ。

面と向かって、夫に言うことはないけれど、

私が与えることができない癒しや安らぎを、夫が、ほかの誰かで

満たされていたら、いいのになぁと思う。

夫が幸せを感じていればいいなって。

これは

裏切りの罪悪感を軽くしたいとか、

そういう感覚とは違うもの。


彼を好きという気持ちと

夫を大切に思う気持ち。

どちらも 嘘いつわりのない想い。


彼も、そこはよくわかってる。

「ダンナさんのこと、大事でしょ。」

黙って頷く。


わたしたちが

絶対にしてはいけないこと。

それは、たいせつな家族を傷つけること。


守りたいものがある。

だからこそ

ウソをつき続けなきゃならない。